被相続人が契約し、自分自身を被保険者として、受取人を相続人の一人と指定した場合、死亡生命保険金は、保険金受取人が契約により発生する固有の権利として取得するものです。
したがって、生命保険金は、被相続人の遺産ではないので、原則として相続財産には含まれないとするのが判例・通説です。
もっとも、問題となる点がいくつかあります。
1.生命保険金が遺留分侵害請求権の対象となるか
「遺留分」とは、一定の相続人が有する、遺産を取得するべき割合で定められた権利のことです。遺留分は、すべての相続人が有する権利ではなく、相続人のうち、配偶者や子、直系尊属が有するものです。例えば遺産のすべてを相続人以外の誰かに遺贈するような遺言があった場合に、遺留分権利者は、遺産を遺贈された人(「受遺者」といいます)に対して、自分の有する遺留分割合に当たる金銭を請求することができます。この請求権を遺留分侵害請求権といいます。
上記のように、生命保険金は遺産ではないので、遺留分侵害請求の対象とはならないとするのが判例です。したがって、相続人以外の人が生命保険金を得たとしても、原則として相続人から遺留分侵害請求を受けることはありません。
2.生命保険金が特別受益として持戻しの対象となるか
「特別受益」とは、相続人が、被相続人から特別に受けた財産等の利益のことです。
例えば、被相続人に3人の子供がいたとして、被相続人が生前、そのうちの1人の子供にだけ特に生活費と学費の援助をしていたという場合、それらの金銭の援助は特別受益となる可能性があります。
そして、特別受益については、その贈与価額を相続の際に相続財産に戻す、いわゆる持戻しの対象となります。この制度の趣旨は、相続人間の実質的な公平にあります。
生命保険金は遺産ではないので、特別受益として持戻しの対象とはならないのが原則です。
判例も、生命保険金は特別受益には当たらないけれども、共同相続人間の実質的な公平という特別受益の制度趣旨に照らして、共同相続人間の不公平が「到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情」がある場合には、特別受益に準じて持戻しの対象となる、としています(最決平成16年10月29日)。
3.保険金の受取人が保険契約の被保険者より先に亡くなった場合
生命保険の契約者は、保険金受取人が死亡してしまった場合、受取人を変更することができます。
ここで、受取人が死亡してしまったのに、受取人を変更することなく、保険契約者である被保険者が死亡してしまった場合、その保険金は誰が、どのような形で受け取ることになるのでしょうか。
保険金受取人が被保険者よりも先に死亡してしまった場合は、その受取人の相続人が保険金受取人となる、というのが判例であり(最判平成4年3月13日)、実務上も基本的にはそのように扱われています。
では、保険金受取人の相続人が複数存在する場合、それぞれ、どのような割合で保険金を受け取ることになるのでしょうか。
まず、保険法には受取割合について特別の規定はないため、原則として、金銭債権に関する分割債権の原則にしたがって、保険金は各受取人が、それぞれ等しい割合により保険金を取得する、とされています(民法427条)。ただし、当事者間の約定により、この原則を修正することができます。つまり、保険契約の約款に、相続人が法定相続分の割合で保険金請求権を取得する、との約定がある場合は、それに従うことになります。
したがって、このような事態が生じたときは、まずは保険契約の約款を確認し、受取人それぞれが受け取る割合について特別の規定がなければ、各人が等しい割合で保険金を受け取ることになります。
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