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相続放棄の落とし穴

  • 執筆者の写真: ゆかり事務所
    ゆかり事務所
  • 1月29日
  • 読了時間: 6分

更新日:4月16日

被相続人が多額の借金だけをのこして亡くなってしまったとき、このままでは自分も債務超過になってしまうから被相続人の全ての遺産・負債を受け継ぎたくない、という場合には、相続人は相続放棄という方法を検討することになります。

相続放棄の申述には期限があり、原則として自己のために相続開始を知った時から3か月とされ、その期間は「熟慮期間」と呼ばれます。その間に諸々を検討し、まさに熟慮を重ねる必要があります。

相続放棄は権利ですからご自身の意思で自由に行えますが、債務超過という事情もなく、ただ遺産を承継しなくていいからという理由で「相続放棄」を選択することは、場合によってはリスクが高く危険な行為となりかねません。

また、相続放棄の要件は法律上規定されていますので、相続放棄ができるかどうかの判断についても確認しておく必要があります。

今回は相続放棄とは何か、どのような効果をもたらすか、また相続放棄をする前にどういったことを検討するべきかについて、本稿では、なるべく分かりやすくご説明したいと思います。



相続放棄とは


相続放棄とは、亡くなった方の権利・義務の一切を放棄することです。借金のようなマイナスの財産だけでなく、現金・預貯金・不動産などのプラスの財産も含めて全ての遺産・債務を受け継がないことになります。被相続人が多額の負債を残して亡くなってしまったとき、相続人は、相続放棄の申述をすることで、被相続人が負っていた債務を免れることができます。

相続放棄は、具体的には家庭裁判所に対して相続放棄をする旨を申し立てる方法(相続放棄の申述)により行います。

相続放棄には期限があり、民法で「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に申述しなければならないと定められています。期間内に申述を行わなければ、単純承認したことになり、全ての遺産・負債を承継したこととなります。

相続放棄をするのであれば、なるべく早めに検討を開始し、必要書類などを収集する必要があります。


相続放棄の効果


家庭裁判所への相続放棄の申述が受理されることにより、申述した人は、はじめから相続人でなかったものとみなされる、という比較的強烈な法的効果が生じることとなります。

その結果、相続関係はどうなるかというと、次順位の相続人がいれば、その人が相続人になるのです。

法定相続の順位とはどういうことなのか、その点についてご説明します。


まず、被相続人に配偶者がいれば、その人は必ず相続人となります。

それ以外の相続人には、下記のような順位があり、先順位の相続人から法定相続人となり、先順位がいない場合は次順位の相続人が法定相続人となります。


必ず相続人

配偶者

第一順位の相続人

直系卑属(子または孫)

第二順位の相続人

直系尊属(父母または祖父母)

第三順位の相続人

兄弟姉妹


例えば、被相続人に配偶者と子がいる場合、法定相続人はその配偶者と子ですが、子が相続放棄したら全ての財産が配偶者に行くのかというと、そういうわけではありません。

第二順位の法定相続人である親がご存命であれば、配偶者と親が相続人となりますし、両親ともなくなっている場合は祖父母、祖父母もなくなっている場合は、兄弟姉妹が相続人となります。(被相続人に父母・祖父母・兄弟姉妹が一人もいない場合は配偶者のみが相続人となります。)


ですから、被相続人の配偶者である妻と子が相続人である場合に、「お母さんにすべて財産を取得させたいから」という理由で子が相続放棄の申述をしてしまったら、子が取得するはずだった相続権が、次順位の相続人に移転してしまいます。配偶者だけに遺産を集めたい場合は、配偶者と子による遺産分割協議で、配偶者がすべての財産を取得するという合意をすることが最善策です。


なお、子が相続放棄すると、もしその子に子(被相続人の孫)がいてもその孫に相続権は移転しません。なぜならば、相続放棄の効果により、相続放棄した子ははじめから相続人でなかったものとなるからです。



相続放棄をする場合、やってはいけないこと


被相続人の債務超過が確定し、引き継ぐべき遺産が皆無で相続放棄を決意したときは、粛々と相続放棄の申述の準備をしますが、その際に決してやってはいけないことがあります。


遺産の処分行為、みなし単純承認にあたる行為


既にご説明した通り、相続放棄というのは、被相続人に属する全ての遺産・負債を丸ごと放棄することです。ということは、遺産を受け取ってしまうと、相続財産を単純承認したことになる(みなし単純承認)ため、もう相続放棄をすることはできません。


実際に遺産を承継するという積極的な行為をしなくても、単純承認したとみなされてしまう可能性のある行為がいくつかありますので、問題となり得る事例をご紹介しておきます。


  • 相続財産を他人に売却した

  • 被相続人が住んでいたアパートの解約をした

  • 被相続人の借金を相続財産から返済した

  • 遺産分割協議をした


これらの行為は、基本的には相続財産を承継した人でないとできない行為ですので、遺産を相続した意思表示であるとみられ、単純承認したとみなされる可能性が高いです。そうなると、単純承認したわけですから、相続放棄はできない、ということになります。

個々の行為がみなし単純承認に当たるか否かは事案の内容によるので、行為を行う前に必ず専門家に相談するようにしてください。


申述期限を徒過すること


相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に対して行う必要があります。

ただ、どうしても3か月の期限内に申述することが間に合わない、というやむを得ない事情がある場合は、延期の申立をすることができます。

たとえば、相続人の中に認知症で自己の意思表示ができない人がいる場合、相続放棄をさせたくても、意思表示ができない人には、家庭裁判所に対する意思表示である相続放棄の申述は不可能です。

そこで、家庭裁判所に申し立てて、意思表示の困難な相続人に代理人を立てるため、後見人を付すことを検討するわけですが、成年後見制度を利用するためには後見開始申立てをする必要があり、そのための資料を収集して申立てをするまでの手続に、概ね数か月を要することが多いです。そうすると、3か月以内に相続放棄を申述することはできません。



まとめ:相続放棄の検討は専門家を交えて速やかに


いかがでしたでしょうか。

相続放棄は期限の制限が厳しく、その選択は迅速に検討しなければなりませんが、相続放棄を選択する以前に、検討しなければならない点も色々あります。

相続に関して知識がないと、選択を誤って取り返しがつかないことにもなりかねません。

迷ったら必ず専門家に相談しながら進めることが肝心です。

そして、申述期限を徒過してしまった後では、どうにもならないこともありますので、専門家に相談・依頼するにしてもなるべく早めに動くことが何よりも重要です。



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