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商業登記法改正~印鑑の届出が任意に!?

執筆者の写真: ゆかり事務所ゆかり事務所

更新日:2021年8月24日

改正商業登記法が、令和3年2月15日に施行されました。

いよいよ商業登記の世界も、ハンコ文化からの脱却という流れが、現実的に見えてきた気がします。


いわゆる会社の届出印の押印が不要になった登記申請の添付書面がいくつかありまして、法務局の申請書様式の記載例から、さりげなく添付書面の「印」のマークが消えていたりします。


もっとも、すべての書面から押印義務がなくなった、というわけではありません。

押印義務のある書面については、印鑑を使わないとしても、電子証明書による押印に代わる証明手続が必要です。

いわゆる印鑑による紙の書類への押印の代わりに、電子証明書が使えるようになってきているのですが、現状、すぐに電子証明書にシフトできるような会社ばかりではないでしょう。


登記にオンライン申請が導入されてから15年くらいたつ現在でも、すべての手続をオンラインで完結できる登記申請は、事実上ほぼない、といいますか、少なくともかなり限られますので、今後どのように電子化が進んでいくのかは、正直まだわかりません。


今回の改正で、割と重要と思われる点が、会社設立の際の、会社の印鑑届出が任意になったという点です。


会社届出印の提出義務を規定していた商業登記法第20条がまるっと削除されたのです。


従前は、会社設立の際に、必ず、いわゆる会社の実印となる印鑑を登記所に提出しなければならないとされていましたが、これが義務ではなくなり、提出してもしなくても、どちらでもよいということになりました。

そして、届出をしていない会社は、商業登記を申請する際に、申請情報に電子証明書を付けてオンライン申請することができる、というわけです。


任意になったのだから、届出印は作らなくていいのか、といますと、現時点ではそうはいえないと思います。


例えば、登記委任状には、押印が必要です。

もちろん、電子証明書を使用する環境が万全に整っていて、登記に全く負担を感じない会社代表者または担当者がいれば、委任状を要さず、印鑑を使わない登記申請は可能ですが、現状で現実的とはいいがたいと思います。電子証明書が使える環境が整っていない場合も多いですし、少し内容が複雑な登記になれば、やはり司法書士に依頼するのが安心ですし、結局、時間もかかりません。


これは私が司法書士だから、司法書士に登記を依頼してほしいから言っているというわけではなく、自分が会社の担当者であっても、やはり複雑な登記実務を一から把握して、さらに電子証明書の環境も整えたうえで、自分一人でその責任を負担するのは、正直勘弁して欲しいと考えると思います。もちろん、各会社がその気になれば、電子証明書の使える環境を整えそれが使えるようになる日は、おそらくそう遠くはないでしょう。しかし、様々な登記実務を把握し、都度その知識を使いこなして日常的に登記申請を行うことは、他にやるべきことをたくさん抱える会社員としては、余計な作業にほかなりません。


さらに、会社の取引というのは相手方があることです。契約を紙の書類で行うことはいまだ多く、今後すぐになくなることはないと考えられますので、会社の届出印での押印を求められることは、すぐにはなくならないでしょう。

例えば、不動産登記を申請する際には、登記義務者が委任状に実印を押すことになるところ、会社・法人の場合は、届出印で押印する必要があります。

不動産取引をすることになった際に、会社届出印を登記所に届けていないとなれば、まずそこからする必要が出てきて、円滑な取引に支障が生じることも考えられます。


このような理由から、これ以降のタイミングでの会社設立であっても、現状では、会社の届出印については登記所に提出するようにお勧めします。印鑑さえ用意すれば、設立登記の申請と同時に印鑑届出まですることは、それほどの負担ではありません。


各社で電子証明書の環境を整えたとしても、しばらくは、届出印を使いながらの取引を継続することになると思います。

電子証明書と届出印での手続を併用しながら、少しずつオンライン化が進んでいくことになるのでしょうが、果たしてその進捗具合はどうでしょうか。


ハンコ廃止という大潮流のもと、登記申請の世界でも今度こそ本当にオンライン化が劇的に進むかもしれませんし、それほどでもないかもしれません。


ともかく、現状でできる限り、基本的な時代の変化に対応できる環境を整えておく必要はありますが、様子見の期間はしばらく続くと思われます。



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