一般的に、相続人が複数いる、いわゆる共同相続の場合、不動産について相続登記をするには、遺産分割協議が必要です。
もっとも、この場合であっても、法定相続分の割合で相続登記をするならば、遺産分割協議前に遺産が共同相続人の共有状態であるということを公示するため、遺産分割協議を経ることなく、相続を登記原因とする所有権移転(または持分移転)の登記を申請することができます。
相続が発生すると、亡くなった方(「被相続人」といいます。)の相続財産は(遺産分割協議がなされる前は)、相続人全員の遺産共有状態となります(民法第898条)。
その状態で、共同相続人が、その共有持分で相続登記を申請すれば、共同相続の登記は各々の法定相続分による共有名義としてなされることになります。
この登記を申請するときは、登記原因証明情報として、相続を証する戸籍謄本・除籍謄本等を提出しますが、遺産分割協議書や印鑑証明書等は不要です。
この場合、共同相続人全員が申請人となることが原則ですが、共同相続人の1人が、共同相続財産の保存行為(民法第252条但書)として、その全員のために単独で相続登記を申請することも可能です。
この場合の共同相続の登記は、相続開始現在の権利関係を公示し、その権利関係は民法の規定によるもので、各相続人の持分を事実として表すにすぎないと考えられるからです。
しかし、共同相続人の1人が自己の相続持分についてのみ相続登記(所有権の一部移転の登記)を申請することはできません(昭和30年10月15日民甲2216民事局長回答)。
上記のように、相続人の1人から全員のためにする相続登記が保存行為として可能である以上、自己の持分のみの登記を認める必要性はないと考えられますし、また、このような登記を許すと、相続人と死者との共有関係が登記記録上で出来てしまうことになり、適当ではありません。
ここで、注意が必要なのは、遺贈と相続が競合する場合です。
例えば、遺言により、ある不動産の持分の一部をAに遺贈し、余りの持分は、各相続人が相続する場合、相続人への持分移転登記を先にすることは、上記で禁止されているとご紹介した、「相続を原因とする所有権一部移転登記」を申請することになるので、認められません。
そこで、先に、遺贈による所有権一部移転の登記をした後に、連件で相続の登記をすることになります。
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