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遺言と死後事務委任契約

  • 執筆者の写真: ゆかり事務所
    ゆかり事務所
  • 3 日前
  • 読了時間: 6分

更新日:2 日前

相続や終活のご相談では、「遺言書を作れば死後の備えは十分ですか」というご質問をよくいただきます。確かに、亡くなった後の財産の承継については、遺言でしっかり決めておくことがとても大切です。もっとも、実際には、遺言だけでは十分に対応できない死亡後の事務も少なくありません。そこで重要になるのが、死後の実務を信頼できる人に託しておく「死後事務委任契約」です。この記事では、遺言と死後事務委任契約の違い、それぞれの役割、どのように使い分けるとよいかを、なるべく分かりやすくご説明します。


死後の備えは「遺言だけ」では足りないことがあります


終活という言葉が広く知られるようになり、「自分に何かあったときに備えておきたい」と考える方は増えています。その際、まず検討されることが多いのが遺言です。遺言は、相続が始まった後に、誰がどの財産を引き継ぐのかを明確にするうえで非常に重要です。遺言があることで、相続人同士の話し合いがまとまりやすくなったり、手続の見通しが立てやすくなったりすることがあります。


しかし、人が亡くなった後に必要となるのは、財産の名義変更や預貯金の解約だけではありません。たとえば、葬儀の手配、火葬や納骨、病院や施設への支払い、賃貸住宅の明渡し、行政官庁等への届出など、生活に密着した多くの事務が発生します。こうした実務は、遺言の中心的な役割とは少し異なるため、別の形で備えておく必要があります。そこを補うのが、死後事務委任契約です。


分かりやすく言えば、財産をどのように分けるかということは遺言に記載し、亡くなった後の実務は死後事務委任契約で備えるという役割分担で考えると整理しやすいです。


遺言に記載すべきこと


1 誰にどの財産を引き継いでもらうか

遺言のもっとも基本的な役割は、財産の承継について意思を示すことです。不動産を誰に相続させるか、預貯金をどう分けるか、特定の人に財産を遺贈するか、といったことを、遺言で定めることができます。

たとえば、長年同居してきた配偶者に自宅を相続させたい、特定の子に事業用資産を承継させたい、世話になった親族以外の人に一定の財産を渡したい、といった場合には、遺言で明確にしておくことが有効です。


2 相続分や遺産の分け方を指定すること

遺言では、法定相続分と異なる割合を定める相続分の指定や、具体的な財産の分け方を定める遺産分割方法の指定もできます。相続人が複数いる場合、これらを明らかにしておくことで、相続開始後の話し合いが長引くのを防ぎやすくなります。 


3 遺言でしかできない事項もある

遺言には、単に財産を分ける以上の役割があります。たとえば、子の認知は遺言によってすることができます。また、子ども(未成年者)の親権を行う者が、一定の場合に未成年後見人を遺言で指定することができます。遺言は、法的な効果を持つ重要な意思表示の方法なのです。


4 遺言執行者を決めておくことの重要性

遺言は、作成して終わりではありません。実際にその内容を実現する人が必要になることがあります。そこで重要なのが遺言執行者です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。

不動産の名義変更、預貯金の払戻し、遺贈の履行など、実際の相続手続には専門的な知識が必要になる場面があります。そのため、適切な遺言執行者を定めておくことは、遺言の実現可能性を高めるうえで大切です。


遺言では対応できないことをカバーする「死後事務委任契約」


ここで注意したいのは、遺言があっても、亡くなった後のすべてのことが自動的に片付くわけではないという点です。遺言は、財産の処分や一定の身分行為について法的効力を持つ一方で、現実に発生する細かな事務を包括的に処理するための制度ではありません。


実際には、亡くなった直後から次のような対応が必要になることがあります。


病院の未払費用の精算

介護施設や老人ホームの利用料の支払い

家賃や管理費の支払い、賃貸住宅の明渡し

葬儀、火葬、納骨、埋葬の手配

菩提寺との連絡や永代供養の手続

行政官庁等への届出や諸手続


これらは一般的には相続人が対応することですが、状況によっては、相続人が遠方に住んでいる、親族関係が疎遠である、そもそも頼れる相続人・家族がいない、といったケースもあります。そのような場合に備えて、準備しておくのが、「死後事務委任契約」です。


死後事務委任契約とは、本人が生前のうちに、自分の死後に必要となるさまざまな事務を、信頼できる第三者に委ねておく契約です。

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要となる、様々な事務手続を具体的に支えるための制度です。特に、おひとりさまの終活、子どもがいないご夫婦、親族に迷惑をかけたくないと考える方にとって、非常に有効な選択肢となります。


遺言と死後事務委任契約の違いを簡単にまとめると


両者の違いを一言でまとめると、次のようになります。


・遺言

→ 財産を誰に、どのように引き継がせるかを決めるもの


・死後事務委任契約

→ 亡くなった後の葬儀や届出、支払いなどの実務を誰に任せるかを決めるもの


このように考えると、それぞれの役割は重なっているようで、実はハッキリ分かれています。どちらか一方だけで十分というより、両方を組み合わせることで、より漏れの少ない死後の備えになると考えるのが自然です。


死後事務委任契約を考える際の注意点


民法では、委任が、委任者または受任者の死亡などによって終了することが規定されています。そのため、死後事務に関する準備では、単に口約束をするのではなく、内容や費用負担、委任の範囲を明確にしたうえで、実務上は公正証書で整えておくことが重要です。

また、死後事務委任契約を作成する際には、どこまで依頼するのか、必要な費用をどう準備するのか、受任者に報酬を支払うのかなど、具体的に決めておくことが大切です。内容があいまいだと、いざというときに受任者が動きにくくなるおそれがあります。 


専門家に相談しながらすすめましょう
専門家に相談しながらすすめましょう

まとめ


遺言と死後事務委任契約は、どちらも死後に備えるための大切な制度ですが、役割は同じではありません。

遺言は、財産を誰に引き継がせるかを決めるためのものです。

死後事務委任契約は、亡くなった後の葬儀、届出、支払いなどの実務を誰に任せるかを決めるためのものです。

そして、死後事務を担う人に不安をお持ちの場合は、将来の不安や負担を軽減するためにも、両者をあわせて検討することが重要です。

その際には、司法書士など、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。



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