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  • 執筆者の写真ゆかり事務所

使用貸借の改正と実務への影響

更新日:2021年8月24日

2020年4月1日、民法の主に債権法が120年ぶりに大改正されました。

この中で、無償で物を貸し借りする契約である使用貸借契約についても改正されています。

カバンや洋服、自動車といった動産の貸し借りや、親戚・友人などにしばらくの間、部屋や家を貸すといった不動産の貸し借りは、日常生活の中でよく行われることだと思います。

この使用貸借契約の改正の内容と、これによる影響を少し見てみたいと思います。



引渡しを要しない「諾成契約」となった

改正前の使用貸借契約は、物の貸し借りを約束するだけでなく、「相手からある物を受け取ることによって」効力を生じる、つまり引渡しを必要とする契約でした。このような契約を「要物契約」といいます。

それが今般の改正によって、引き渡すことを必要とせず、物の貸し借りをする約束をするだけで効力を生じる契約となりました。これにより、「貸すよ」「借りるね」という約束をすることで効力が生じる契約となったのです。このような、約束をするだけで効力が生じる契約を「諾成契約」といいます。

無償で貸す、借りるといっても、不動産の貸し借りなど、個人の財産の権利関係に大きな影響を与えかねない契約も含まれるので、使用貸借が「諾成契約」となったことはかなり大きな変化です。

そこで、借主が物を受け取るまでは、貸主は契約を解除することができる、という規定が同時に設けられ、貸主は物を相手方に引き渡すまでは、解除の意思表示をして契約をなかったことにできるのですが、その契約が書面による場合は、引渡前であっても、もはや解除をすることはできません。

また、使用貸借の契約終了時には、受け取った物を返還する、ということも明記されました。

これらの改正は、使用貸借契約が経済上の取引として行われることも多いことから、法的拘束力を強化する趣旨で行われたものと考えられます。

使用貸借終了時の原状回復義務

使用貸借契約が終了したときに、借主が借用物に附属させた物については、原則として借主に収去義務が規定されました。ただし、附属させた物がもはや分離することができない場合や、あまりにも多額の費用を要する場合は、借主は収去義務を負いません。

なお、附属物を収去することは借主側の権利でもあるので、借主は自分が附属させた物を収去することはできます。

また、借用物に損傷が生じた場合は、原則として借主に現状に回復する義務を負わせることが規定されました。これについても、その損傷が借主の責めに帰することができないような場合は免責されます。

これらが明記されたことにより、契約終了時に生じた通常の損耗や経年劣化について貸主の責任で原状回復させたいという場合は、個別の使用貸借契約にその旨を明記しておくことが必要となります。

これらの改正は、使用貸借契約が、それぞれの取引関係の趣旨や個別の事情により様々であることから、任意規定はおかず、合意によることとされたためです。

使用貸借契約は、日常生活の中でも、また事業活動の取引の一環としても広く使われているものです。改正点を改めて確認してから、契約を締結する必要があります。



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