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  • 執筆者の写真ゆかり事務所

担保権の付いた不動産の相続

 不動産ローンの返済中に不動産の所有者が死亡すると、不動産とともに、不動産に付着した担保権の債務(ローン)も相続の対象となることが考えられます。

 団体信用生命保険(以下、「団信」といいます。)に加入している住宅ローンの場合は、相続開始により保険金で住宅ローンが完済されるため残債務返済の問題は生じませんが、登記されている担保権の登記を抹消するための手続が別途、必要となります。

 他方、収益不動産等、団信保険未加入の不動産の所有者に相続が生じた場合にローンが残っていた場合には、その担保権について、どのような手続が必要となるのでしょうか。

今回は、担保権の付着した不動産を相続したときの手続についてお話しします。




団信に加入している場合

 住宅ローンを組む際には、団信に加入することが原則とされています。また、収益不動産の購入でローンを組む際も、団信に加入することは任意で可能です(必須の場合もあります)。団信とは、ローン契約者(借主)が亡くなったり、高度障害になったりした場合などに、遺族が困らないように、ローンの債務者が保険に加入し、保険金で借入金を完済する仕組みです。ローン返済中に、所有者が亡くなった場合、ローンは保険料により完済されるので、遺族に借入債務が残ることはありません。

 その場合も、登記されている抵当権などの担保権は自動的に抹消されるわけではないので、相続登記とともに、抵当権抹消登記の手続を行う必要があります。

 具体的には、ローン借入先の金融機関に対して、所有者に相続が開始した旨を報告し、抵当権抹消のための手続を進め、抹消登記のための書類を交付してもらいます。相続が発生しているので、相続による不動産の所有権移転の登記(いわゆる相続登記)を申請する必要がありますが、その際に一緒に、団信による抵当権抹消登記を申請することになります。

 なお、死亡前にローンを完済しているにもかかわらず未だ抹消の登記がなされていない、という場合には、既に抵当権の抹消関係書類が被相続人宛てに届いている可能性があります。この場合は、既に発行されている抹消関係書類を利用して、抵当権抹消登記と相続登記を申請することになります。


団信に加入していない場合

 現在は、住宅ローンを組むためには団信に加入することが原則となっていますが、団信加入が任意の時期に住宅購入をした場合には、団信未加入ということがあり得ます。また、収益不動産購入においては、アパートマンションローンや不動産投資ローンでは団信加入は任意であることも多いため、団信未加入であることもよくあります。

 ローン返済中の不動産には、基本的に抵当権などの担保権が付着しています。担保権の債務者は不動産の所有者であることが多いので、不動産の所有者が亡くなって相続が開始すれば、担保権の債務者にも相続が発生していることになります。そうすると、相続による所有権移転と同時に、担保権者である金融機関において、相続による債務者の変更の手続も必要になります。

 まずは、担保権者である金融機関の担当者に連絡して、担保権の付着した不動産について、相続ないし債務者変更の手続を進めることになります。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議が必要になりますが、相続人のうち誰が債務を承継するのかについては、ローンの支払能力についての金融機関の審査があるため、金融機関と相談しながら決定することになります。相続人のみで債務を引き継ぐ相続人を決定すること自体は可能ですが、相続人間で協議を経ている場合でも、債権者である金融機関は、任意の相続人に請求することも、相続人全員に請求することもできます。

 収益物件であれば定期的に賃料収入があるため、その収入でローンを返済していけるのが一般的ですが、住宅ローンの場合は賃料収入があるわけではないため、残債務を相続人が引き継げないという事態も生じる可能性があります。この場合の対処方法は相続人の資産状況により異なります。

 1人暮らしの方が住んでいた家など、相続発生後誰も住んでおらず空家となった場合は、売却を検討することになるでしょう。その際には居住者の死亡により空家となったことにより事故物件となるため、市場価値としては若干下がる可能性もあります。(死亡理由にもよります。)なお、事故物件であるという事実は重要事項として必ず買主に告知する必要があります。

 一方、相続発生後も家族が住んでいるのであれば、引き続き居住する相続人が債務を引き継ぐのが一般的と考えられます。ただし、金融機関は支払能力に応じて、任意の相続人に対して請求できるので、引き続き居住する相続人の資産状況によっては、住んでいない相続人に対して残債務を請求することもできます。


ローン返済が困難な場合

 相続により承継した不動産に引き続き居住する必要があるなど売却することはできないけれど、引き継いだローンの返済が難しいという場合は、個別の検討が必要となります。

 一つには、金融機関に対して返済計画の見直しを相談することが考えられます。例えば月々の支払額を減額してもらったり、ローンの返済の条件を変更してもらったりするなど、可能な方法を提示してもらいます。金融機関としても、貸し付けた金額をきちんと回収したいでしょうから、可能な範囲で、条件の変更に応じてもらえる可能性があります。

 相続した不動産に住む予定はないけれども売却によってもローンを返済できそうにない場合など、相続人の資産状況ではどうしても返済が不可能ということであれば、相続放棄も検討することになります。相続放棄は、家庭裁判所に申述することにより行い、申立てが認められると申述者ははじめから相続人でなかったことになるため、ローン返済義務を承継する必要はなくなります。ただし、相続放棄は被相続人(亡くなった方)の全ての遺産を放棄することになるのでプラスの財産も引き継げなくなる点や、期間制限がある点など、注意が必要です。相続放棄の判断は、慎重かつ迅速に行うことが必要ですので、早い段階で専門家に相談しながら行うことをお勧めします。


 担保権が付着した不動産の相続は、金融機関などの債権者が絡み、かなり煩雑な手続となるので、相続人がご自身で処理するのが難しいと感じたら、是非、司法書士など専門家にご相談いただければと思います。


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