遺言を書いておいた方がいい、と言われても、
「まだ何十年も生きるし、なにも今書かなくても…」
「確かにいい歳だけれども、縁起が悪そうだし…」
「元気な人に遺言を書け、だなんて、なんか失礼じゃない…?」
等々と、思われる方が多いかもしれません。
そう思われるのもごもっともですが、特に不動産をご所有の方であれば、遺言を書くのに早すぎるということはないのです。
「万が一の時」は突然やってきます。
そして、その万が一の時が訪れたら、遺言がある場合とない場合で、遺された方の人生に、天と地ほどの大きな違いが生じてくるのです。
特に遺言の作成をおすすめしたい方は、次の方々です。
不動産をお持ちの方
ご自宅でも収益物件でも、不動産をお持ちの方であれば、遺言を残しておく実益はあります。不動産は登記されていることが前提で、その所有者がなくなって名義を変えるためには、遺言がない以上、原則として相続人全員の関与が必要となるからです。
土地の相続登記の義務化が国会でも審議される中(2021年2月5日時点)、万が一の時に備えておく必要性は増していると考えます。
子供のいないご夫婦
子供がいないご夫婦であれば、自分に万が一のことがあっても、相続人は配偶者だけ?
そんなことはありません。
亡くなった方にご両親がいらっしゃればご両親が相続人ですし、ご両親が既に他界していらっしゃるのであれば、ご兄弟が相続人となります。ご兄弟が全員亡くなっている場合は、その子供、つまり被相続人の甥や姪が相続人となります。
兄弟間の関係が疎遠な場合、遺された配偶者が被相続人のご兄弟や甥姪に連絡を取ること自体、非常にハードルが高く、連絡先が分からないことだってあります。
近時の民法改正で生存配偶者の居住権保護の制度が創設されたため、自宅不動産の所有者であった被相続人の配偶者であれば、すぐに家を追い出されるようなことはまずないと思いますが、自分の住んでいる家の所有権がなかなか定まらないというのは、非常に心細いものです。
家を所有していて、未成年者のお子さまがいる方
未成年者のお子さまを遺して、自分に万が一のことがあったときのことを考えるのはそれだけで辛いことですが、実際に万が一のことが起こってしまったときは、辛いだけではなく、遺されたご家族は、家や財産の名義を変えるのに困難を極めることになりかねません。
というのは、未成年者は、法律上、遺産分割協議を自分自身で行うための行為能力がない、とされているからです。この場合、遺された親が子を代理して遺産分割協議ができるかというと、親子という相続人同士では利益が相反するため、協議を行うことは法的には不可能です。この場合、子供のために特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
推定相続人に、意思表示をすることができない、または困難な方がいる場合
上述したように、相続が開始すると、遺言がない場合は、遺産を分けるためには、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。共同相続人の中に、精神疾患等により自らの意思表示をすることが困難な方がいると、協議をすること自体が難しくなります。この場合、当該相続人のために、成年後見人を選任し、その後見人が、本人に代わって遺産分割協議に参加することになりますが、この成年後見人の選任手続も、家庭裁判所に申し立て、その決定によることになります。
事実婚カップル
同じ戸籍に入っていないカップルは、事実上の夫婦関係や、生活上または人生において深いパートナーシップがあったとしても、残念ながら法律上は互いの相続人となることはありません。
一緒に住んでいる家が、どちらかの単独所有、又はお二人の共有である場合でも、一方に相続が開始すれば、その所有権又は持分は、遺産相続の対象になり、法定相続人の遺産共有状態となります。大切な事実上のカップルは、遺言などがなければ、相続が開始しても、その所有権や持分を取得することができません。
つまるところ、不動産をお持ちの方は遺言等の対策を
以上のように、不動産の所有権名義の移転をはじめとして、その遺産の分配は、遺言がない場合、相続人間の協議で決まるため、推定相続人が疎遠であるとか、行為能力に問題がある場合、また、推定相続人以外に資産を遺す必要がある場合は、遺言を作成しておくことは、必須ともいえるのです。
自宅不動産などの資産をお持ちの方は、大切なご家族やパートナーのために、遺言の作成など、万が一の時に備えた対策を検討しておくことをおすすめいたします。
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