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資本金をどのように定めるか

更新日:2021年8月24日

かつては、資本金が1,000万円以上でなければ株式会社を設立することはできないという時代もありましたが、2006年の法改正で最低資本金制度が撤廃されたことにより、現在、株式会社は、資本金の額が1円であっても、設立することができます。

もっとも、会社の資本金というのは、会社の規模、会社の体力の目安となるため、対外的に信用力を得ようとするのであれば、一定の資本金の額が必要です。つまり、資本金が多いければ多いほど、事業規模が大きく、安定した経営をしている会社と推測されやすく、安心して取引ができるという印象を与えることができます。

設立時だけでなく、設立後の新株発行等による増資、準備金や剰余金の資本組入れ等による増資・減資、その他会社分割や合併等の組織再編等により、資本金が変化する場面がありますが、その際、資本金は、いったいどのくらいに定めればよいのでしょうか。


そこで、今回は資本金を定めるための基準について、多面的な観点から、検討してみたいと思います。



1.会社法・商業登記法


資本金の額は登記事項とされています(会社法第911条第3項第5号)。


①役員変更の登記申請の登録免許税は、資本金の額が1億円以下の会社又は一般社団法人等については、1万円となります。これに対して資本金の額が1億円を超える場合には、3万円となります。


②資本金の額が5億円の場合、会社法上の大会社(同法第2条第6号)となります。

大会社とは、

「最終の事業年度に係る貸借対照表上に計上された資本金の額が5億円以上又は負債の額が200億円以上である会社」

をいいます。

大会社になると、さまざまな制約を受けることになります。もっとも影響が大きいのは、法定の監査が必要になるという点です。具体的には、監査役と会計監査人を設置する必要があります。その他、業務の適正を確保するための体制の整備義務、貸借対照表及び損益計算書又はこれらの要旨の公告義務、有価証券報告書提出会社における連結計算書類の作成義務等があります。


③株主による払込金は、その金額の2分の1以下までは、資本金ではなく、資本準備金とすることができます(同法第445条第2項)。

これにより、運転資金等の確保から自己資金(自己資本)は多めに用意したいという場合で、かつ、税負担の回避から資本金を1,000万円未満にとどめたいという場合は、資本準備金に振り分けることで、そのメリットを享受できます。


2.税務関係

①法人税について、資本金の額が1億円以下の場合、税務上は中小企業と位置付けられており、年所得が800万円以下の部分について軽減税率が適用されます。また、交際費等については、損金不算入が原則ですが、資本金の額が1億円以下の場合、支出した交際費等のうち年800万円までは全額損金算入することができます。


②消費税について、会社設立時に資本金の額が1,000万円未満の場合は、会社設立後2事業年度にわたり、原則として免除されます。新設会社の場合、原則として消費税の課税対象となる売上高の基準期間がないため、第1期、第2期の売上高にかかわらず、最大で2事業年度にわたり、消費税の納税義務が免除されるということです。ただし、第2期は前年の特定期間(原則、前年度の期首から6か月の期間)に課税売上高が1,000万円を超えた場合は課税対象者になります。


③地方税である法人住民税(均等割)について、資本金等が1,000万円以下で従業員数50人以下の場合、原則として最低額の7万円(道府県民税2万円+市町村民税5万円)となります。なお、資本金「等」というのは、ざっくりいうと資本金、出資金、資本準備金、その他資本剰余金などがその範囲に含まれます。また、道府県民税、市町村民税ともに自治体により超過税率が採用されている場合があるので注意が必要です。


3.許認可関係


①有料職業紹介事業許可の場合、純資産(繰延資産、営業権を除く)が500万円以上というのが要件です。

②労働者派遣事業許可の場合、純資産(繰延資産、営業権を除く)が2,000万円以上というのが要件です。

③建設業許可(一般)の場合、自己資本が500万円以上であり、建設業許可(特定)の場合には、資本金の額が2,000万円以上、かつ、自己資本が4,000万円以上となります。

以上のように、許認可関係では、会社の純資産や自己資本を基準として判断されることが多く、その場合、会社法上の資本金そのものが問題となるわけではありませんが、その場合でも、資本金の額が前提になります。


4.中小企業基本法


中小企業基本法では、中小企業者の範囲を定めて、それに基づき特例や支援を規定しています。中小企業者の範囲は、中小企業基本法第2条において、業種別に資本金、従業員数が定められています。代表的な種別としては以下の4業種です。

①製造業その他建設業、運輸業等 資本金3億円以下、従業員数300人以下

②卸売業 資本金1億円以下、従業員数100人以下

③小売業、飲食店 資本金5,000万円以下、従業員数50人以下

④サービス業 資本金5,000万円以下、従業員数100人以下


なお、上記の資本金または、従業員数のどちらかの要件が満たされていれば中小企業者に該当することになります。


5.下請代金支払遅延等防止法(下請法)


下請代金支払遅延等防止法は、下請代金の支払遅延等の防止と、親事業者の不公正な取引の規制、及び下請事業者の利益を保護する目的で定められた法律です。下請取引の適正化を図るため、親事業者の義務や禁止行為を規定し、公正取引委員会や中小企業庁が、親事業者が違反した場合の罰金や勧告を行うことになります。

適用範囲は、以下の通りです。

①親事業者が資本金3億円超の場合、下請事業者は資本金3億円以下(個人含む)で適用

②親事業者が資本金1,000万円超3億円以下の場合、下請事業者は資本金1,000万円以下(個人含む) で適用



資本金は、会社の信用力を測るうえでも重要な指標です。安易に定めてしまうと、いざというときに思わぬ不利益を負いかねません。それぞれの会社の事情に応じて適切な額を定めるようにしたいですね。


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