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遺言執行者の権限

更新日:2021年8月24日

社会の高齢化や、人々の権利意識の変化を背景に、民法の相続に関係する法律が改正され、また、法務局で遺言書を保管する制度を規定した法律が新設されました(いずれも平成30年7月成立)。

日本の相続法に大きな変化が訪れたのです。

その中でも、相続の手続において、特に実務的に重要になってくるのではないかと思われるのが、遺言執行者の権限についての規定です。


遺言では、「遺言執行者」を決めておくことができます。

遺言執行者は、遺言に書かれている内容を実現する人ですので、遺言者にとっては、とても重要な役割を果たすべき存在です。



遺言執行者の通知義務

旧法下でも、遺言執行者は、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければならない(民法第1011条)とされていましたが、遺言執行者自身がその任務にあたるという事実や遺言内容を相続人に通知する義務は法定されていませんでした。また、遺留分を有しない相続人に対し、目録を交付すべき義務があるかどうかが必ずしも明らかではなく、特に財産を相続しない相続人と、その人たちに遺言内容を伝えずに執行を開始する遺言執行者の間で、トラブルが起こる事態も少なくなかったのです。


新しい相続法では、この点を是正するため、遺言執行者に、遺言の内容を相続人に遅滞なく通知することが義務付けられました(同第1007条2項)。

これは、遺言執行者の権限を明確化し、また、相続人が遺言の存在やその内容を知る手段を確保するための制度といえます。


また、新法では、「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。」(同第1012条第2項)とされ、さらに、「○○に相続させる」という遺言がなされた場合に、遺言執行者が、遺産を相続する相続人(「受益相続人」といいます。)のために「対抗要件を具備することができる」とされたのです(同第1014条第2項)。つまり、不動産を相続した受益相続人がいた場合、その相続人に代わって、その人への所有権移転登記を遺言執行者が単独で申請できるようになった、と考えられます。

遺言に記載された預貯金債権に関しても、その払戻しや契約解約の権限を遺言執行者に付与した規定を、あえて置いています(同3項)。


そして、旧法化では、遺言執行者は原則として「やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない」として、他人に執行させることを制限していましたが、新法では、「自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる」と規定されました(同第1016条第1項本文)。


以上のことから、遺言執行者の権限がより明らかになり、また、強化されることになった、ということができます。


遺言執行者の負担

遺言執行者の権限明確化・権限強化によって、遺言執行者はその履行がしやすくなったといえるのでしょうか。

司法書士等の資格者が遺言執行者となる場合は、確かにそうだといえるでしょう。遺言執行者の法的地位が確立されたというのは、実務を行う上でこれほど心強いことはありません。


しかし、遺産承継手続を円滑に進めようという意図で、相続人の一人や相続人でない受遺者を遺言執行者に定めていることも多いと思います。

そのようなときに、一般人である遺言執行者は、場合によっては、これまでと同じかそれ以上に、物理的にも精神的にも重い負担を負うことになるかもしれません。


例えば、相続人が複数ある場合に、遺言者がその遺言によって、相続人ではない受遺者に遺産の多くを遺贈し、その受遺者が遺言執行者である場合、通知として遺言のコピー等必要書類を相続人に送付し、相続登記などを進めることで、法的な効力は生じ、一応、法的トラブルは防げるかもしれません。

一方で、相続人と遺言執行者との人間関係に係るトラブルが防げるようになるかというと、それは遺言執行者の法的権限の明確化ないし強化だけでは、難しいとも思えます。


もちろん、遺言執行者の権限の明確化と強化によって、法的地位が一層強化された遺言執行者の方の遺言執行がしやすくなる、ということもあるでしょう。要は、遺言執行者や相続人などの利害関係人それぞれの事情により、ケースバイケースであるということです。


円滑に遺言執行を行うには

可能であればここで、遺言執行をスムーズに行うためのソリューションをバシッと提示したいのですが、どのケースにも対応できる秘策はそう簡単には見つからず、申し訳ないのですが軽々に申し上げることはできません。応仁の乱の時代から脈々と続く相続トラブルを、制度設計の改定だけで魔法のように解決することは容易ではないのです。


ただ、ここで大切なことを思い出して欲しいのですが、遺言執行というのは、遺言者の意思を尊重して遺産承継を実行する、という作業です。


遺言者が生涯にわたって築いてきた大切な財産について、時間をかけて悩んだあげく、いろんな思いを込めて、その分け方を決めたのが遺言です。

その遺言者の人生に深くかかわってきた相続人等の身としては、遺言の内容については様々な評価や感想があるとは思いますが、まずは一旦、遺言者の意思を尊重する方向で考えてみるというのはいかがでしょうか。


遺言執行者も、相続人など遺言の利害関係者との信頼関係を築けるよう、なるべく誠意が伝わるような仕事を心がけることが重要です。


そして、遺言者としても、「これは遺言者の意思なのだから、尊重しよう」と、思わせる遺言を作成する工夫をするというのも、のちのトラブル回避のため必要であるともいえます。



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